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ファクタリングの仕訳・勘定科目:会計処理の分岐点と決算で迷わない型

決算前、通帳には入金があるのに、試算表の売掛金が減っていない。あるいは、同じ手数料のはずなのに月によって別の勘定科目に落ちていて、社内で説明が噛み合わない。ファクタリングの会計処理で揉めるのは、たいていこの手のズレからです。
多くの場合、会計ソフトの操作ミスというより、契約書の条項とお金の流れを確認しないまま仕訳を切っていることが原因です。
ここから先は、二社間・三社間の一般的な説明は必要な分だけにとどめ、仕訳(借方・貸方)と勘定科目を「型」で整理します。ノンリコースと実質リコースでどこが変わるのか、手数料が複数あるときにどう分けるのか、期末をまたいだときに残高をどう整えるのか。決算で差し戻されにくい順にまとめます。

仕訳がブレる3つの分岐点:契約実態を先に揃える

ファクタリング契約の条項と入金フローを確認する経理担当者

迷ったときほど、順番を固定するとブレません。最初に契約書で「買戻し(償還請求)」や補填の条項を拾います。次に通帳で、入金がどの口座に、どの名義で入っているかを確認します。最後に請求書(明細)で、手数料が差額なのか別請求なのか、項目はいくつあるのかを確かめます。ここを飛ばすと、同じファクタリングでも帳簿の形が月ごとに変わりやすいです。

分岐点 確認するもの 仕訳で起きやすいズレ
回収不能の負担 償還請求権(買戻し)・補填・差替えの条項 売掛金を消したあとで、未回収時の負担が残っていることに気づき、決算で差し戻し
入金の通り道 入金先口座、入金名義、二社間/三社間のフロー 入金を売上や雑収入のように処理してしまい、売掛金の残高と噛み合わない
手数料の内訳 差額控除か別請求か、事務手数料・審査料・振込手数料の有無 手数料を一行でまとめてしまい、勘定科目と消費税区分の見直しが後から発生する

まず決めるのは、売掛金(債権)を消してよい条件か、残すべき条件かです。ここが決まると、借方・貸方の型はほぼ固まります。そのうえで手数料は、「差額として控除される買取手数料」と「請求書が出る費用(事務手数料など)」を混ぜずに残してください。あとから税理士に確認が必要になったときも、根拠のたどり直しがラクになります。次章では、ノンリコース(償還請求なし)を前提に、二社間・三社間それぞれの基本仕訳を、入金と決算残まで一つの流れで示します。

ノンリコースの基本仕訳:二社間・三社間を「1つの型」で押さえる

ノンリコースのファクタリングにおける仕訳の流れを確認する経理担当者

ノンリコースは、言葉だけ聞くと難しく見えますが、要は「売掛先が払えなかったときの穴埋めを、原則としてこちらが背負わない」契約です。買戻し(償還請求)や補填の条項が付いていない、という読み方をすると現場では早いです。だから仕訳も、売掛金を“回収した”ではなく“売った”として整理しやすくなります。入金が早まる代わりに手数料が差し引かれる——その形が帳簿にきれいに出ていれば、決算で突っ込まれにくくなります。二社間でも三社間でも、まずはこの型を土台にして考えていきます。

前提の数値例:売掛金100万円、手数料10万円

例はシンプルにそろえます。売上計上は済んでおり、売掛金が100万円残っている状態。買取手数料が10万円で、あなたの会社に入る金額は90万円とします(手数料が別請求で増えるケースは第5章で分けて扱います)。

項目 金額 備考
売掛金(債権) 1,000,000円 売上計上済みの残高
買取手数料(差額) 100,000円 勘定科目名は社内で統一
入金 900,000円 普通預金に入る想定

基本仕訳:二社間・三社間どちらでも「まず売掛金を消す」

ノンリコースとして整理するなら、最初に押さえるのはこの1本です。売掛金を消し、差額(手数料)を費用として計上し、入金を受けます。勘定科目の名称は複数候補があり得るため、ここでは代表例として「売上債権売却損」を置きます(社内方針で支払手数料等に統一しても構いません)。

タイミング 借方 貸方 メモ
買取入金時
  • 普通預金 900,000
  • 売上債権売却損(または支払手数料等)100,000
  • 売掛金 1,000,000
まず売掛金を消す。ここが土台

ここから先で変わるのは、売掛先からの入金が「あなたの口座に入るのか」「ファクタリング会社に直接入るのか」です。三社間は自社の通帳に回収入金が出ないことが多く、基本仕訳だけで完結しやすいです。二社間は期日に売掛先から入金が入り、その後にファクタリング会社へ送金が出る形になりがちで、ここで帳簿が崩れます。

パターン 通帳の見え方 追加で必要になりやすい仕訳
三社間(売掛先→ファクタリング会社) 自社の通帳に「回収入金」が出ないことが多い 原則なし(基本仕訳で完結しやすい)
二社間(売掛先→自社→ファクタリング会社) 期日に入金が入り、その後に送金が出る 売掛先入金は「預り」で受け、送金で相殺する

二社間で売掛先から入金が入る場合、売掛金はすでに消えている前提なので、その入金を回収として処理しないほうが帳簿が崩れにくいです。いったん預り金(または仮受金)で受け、ファクタリング会社へ送金したタイミングで相殺します。

タイミング 借方 貸方 メモ
売掛先からの入金
  • 普通預金 1,000,000
  • 預り金(または仮受金)1,000,000
「預かったお金」として受ける
ファクタリング会社へ送金
  • 預り金(または仮受金)1,000,000
  • 普通預金 1,000,000
入金と出金が預り金で相殺される

入金が分割・期末をまたぐとき:未収入金でつなぐ

実務では、買取入金が一括ではなく「先に一部、後日に残り」という形になることがあります。期末をまたぐ場合も同じで、あとで受け取る分を未収入金として残しておくと、決算で説明が通しやすいです。

タイミング 借方 貸方
先に80万円が入金
  • 普通預金 800,000
  • 未収入金 100,000
  • 売上債権売却損(または支払手数料等)100,000
  • 売掛金 1,000,000
後日10万円が入金
  • 普通預金 100,000
  • 未収入金 100,000

この章で扱った手数料は、入金から差し引かれる「差額」のイメージです。ところが実務では、事務手数料・審査料・振込手数料などが別請求で発生するケースもあり、これを差額と一緒にしてしまうと、勘定科目の統一や消費税区分の整理が後から崩れやすくなります。明細(請求書)を残し、差額と別請求は分けて記録しておくのが安全です。消費税区分は契約実態と請求内容で判断が分かれ得るため、迷う場合は税理士等に確認してください。

実質リコースの仕訳:借入に近いケースと戻し・貸倒

買戻し条項のあるファクタリング契約と仕訳を照合する経理担当者

「実質リコースとは、売掛先が支払不能になったときに、損失の負担が自社に残る仕組み」です。たとえば「60日後に100万円入金予定の売掛金」をファクタリングした場合、ノンリコースなら手数料を支払っていれば、原則としてそれ以上の負担は発生しません。いっぽう実質リコースでは、売掛先が支払不能になると、買戻し(償還請求)や不足分の補填などにより、自社が最終的に負担する可能性があります。

実質リコースは「売掛金を消さない」が出発点

実質リコースの判断は、言葉より条項で見たほうが早いです。たとえば「回収できない場合は買い戻す」「不足分を補填する」「別の売掛債権と差し替える」などがあれば、回収不能の負担が残っている可能性があります。この場合、売掛金は通常どおり自社の資産として残し、資金の受け取りは借入金に近い形で処理するほうが、後から崩れにくいです。
また二社間では、売掛先からの入金がいったん自社口座に入り、その後ファクタリング会社へ送金する流れが多く、ここで「預り金で受けるのか」「借入として扱うのか」が混ざりがちです。買戻し条項がある前提では、借入として扱うほうが説明が通りやすいケースがあります。

仕訳の型:受け取り→回収→返済の3点セットで考える

例は第3章と同じく、売掛金100万円、手数料10万円、入金90万円でそろえます。ここでは売掛金は消さず、資金を受け取った時点で借入金(短期借入金など)を立てる形を例示します。勘定科目名は会社の運用で差が出るため、名称は税理士や社内ルールに合わせて統一してください。

タイミング 借方 貸方 ポイント
資金の受け取り
  • 普通預金 900,000
  • 支払手数料(または売上債権売却損等)100,000
  • 借入金(短期借入金など)1,000,000
売掛金は消さない。資金は「借りた」として受ける
売掛先からの入金(通常の回収)
  • 普通預金 1,000,000
  • 売掛金 1,000,000
売掛金は通常どおり回収で消える
ファクタリング会社へ送金(返済)
  • 借入金(短期借入金など)1,000,000
  • 普通預金 1,000,000
借入金を落として終える。通帳の動きと一致しやすい

ここまでを1セットにすると、「入金があるのに売掛金が減らない」「売掛金を消したら後から戻された」といったズレが起きにくくなります。手数料が差額ではなく別請求になっている場合や、事務手数料・振込手数料などが混在する場合は、第5章で分け方を整理します。

実質リコースの厄介なところは、売掛先が払えないときに「売掛金の回収不能」と「借入金の返済」が同時に重なる点です。売掛金が回収できないなら、会計上は通常どおり貸倒の検討が必要になります(貸倒処理や貸倒引当金の扱いは、会社の状況と税務判断に左右されるため、税理士に確認してください)。一方で、借入として立てている以上、返済(送金)の資金は別途用意しなければならず、資金繰りの圧迫につながりやすいです。
ここで大切なのは、契約書の条項と、実際の入金・送金の流れをセットで残すことです。書類がそろっていれば、決算の場でも「なぜ売掛金を消していないのか」「なぜ借入金を立てているのか」を説明しやすくなります。

次章では、手数料が複数ある場合の勘定科目の分け方と、消費税区分で迷いやすいポイントを整理します。請求書に「手数料」が何種類あるかで、帳簿の整え方が変わるためです。

手数料が複数ある場合:勘定科目と消費税区分の考え方

ファクタリングの請求書の手数料内訳と消費税区分を会計ソフトで確認する経理担当者

ファクタリングの仕訳が崩れる原因は、売掛金を消す/残すの判断だけではありません。実務で多いのは、請求書の「手数料」が一行では終わらず、差額控除・事務手数料・振込手数料・登記関連などに割れているケースです。ここを一つの勘定科目に混ぜると、消費税区分の見直しが後から発生し、決算で説明がしづらくなります。この章は、科目と税区分を“あとでたどれる形”で残すことだけに絞ります。

まず分ける:差額控除か、別請求か。請求書の行数が答え

同じ「手数料」でも、見た目が違うだけで会計処理が変わります。入金額から差し引かれている差額(いわゆる割引料・買取手数料)が中心なのか、それとも請求書で別請求の費用が乗っているのか。ここを混ぜないのがコツです。
会計ソフトでは、差額控除は入金の仕訳の中で同時に計上されやすく、別請求は未払金や口座引落の仕訳で計上されやすいです。つまり、通帳と請求書がそろっていれば、科目と税区分を分ける材料は足りています。

勘定科目と消費税区分の目安:迷ったら「金銭債権の譲渡」か「役務提供」かで切る

消費税の整理は、ざっくり言うと二択です。売掛金などの金銭債権の譲渡そのものは非課税取引に含まれます。一方で、事務作業や審査、代行など「サービス(役務)」の対価なら課税取引になりやすいです。
ただし実務では、請求書の書き方が会社ごとに違い、同じ名前でも中身がズレることがあります。断定ではなく、次の表のとおり「どの書類で判断するか」をセットにしておくと、税理士とのすり合わせが早くなります。

費用の例 よくある勘定科目 消費税の見方(目安) 判断材料
差額控除の買取手数料(割引料) 売上債権売却損(または支払手数料) 非課税の方向 契約書・精算書:債権の譲渡対価として差額控除されているか
事務手数料・審査料・利用料など(別請求) 支払手数料 課税の方向 請求書:消費税が明記されているか、役務の対価として説明されているか
振込手数料・送金手数料 支払手数料 請求書どおりに合わせる 請求書/通帳:税込・税抜、税額表示の有無
登記関連(債権譲渡登記の代行・実費) 支払手数料/支払報酬/租税公課など(内訳で分ける) 内訳で割れる 明細:実費(税・公的手数料)と代行報酬が分かれているか

ここまで分けておくと、会計処理の修正が必要になっても「どの費用が、どの根拠の税区分だったか」を崩さずに追えます。特に、手数料を一行でまとめると、後から課税・非課税の判断が入り、仕訳の借方・貸方は合っているのに、消費税だけがずれていく、という形になりやすいです。

数値例として、売掛金100万円をノンリコースで買取してもらい、入金は90万円(差額10万円が買取手数料)。さらに別請求で「事務手数料5,000円+消費税」「振込手数料330円+消費税」が届いた、とします。ここで大事なのは、差額10万円と別請求の費用を混ぜないことです。

タイミング 借方 貸方
買取の入金(差額控除)
  • 普通預金 900,000
  • 売上債権売却損(または支払手数料)100,000
  • 売掛金 1,000,000
別請求(請求書ベース)
  • 支払手数料 5,330
  • 仮払消費税 533(または会計ソフトの税区分で自動計算)
  • 未払金 5,863

仕訳の形は会社の経理ルールや会計ソフトの入力方式で変わりますが、結論は同じです。差額控除分は「売掛金を売った結果の差額」として残し、別請求分は「役務の対価や実費」として明細どおりに残す。ここまでできていれば、第6章の決算整理(期末残高と入金タイミングのズレ)に進んでも、帳簿が崩れにくいです。

決算整理:期末残高と入金タイミングのズレを整える

決算前に売掛金残高と入金タイミングのズレを確認する経理担当者

決算で揉めやすいのは、仕訳の“形”よりも「期末に何が残っているか」が説明できないときです。ファクタリングは入金が前倒しになり、二社間では通帳に売掛先の入金と送金が並ぶこともあります。だから期末は、売掛金・未収入金・預り金(仮受金)・未払金のどれが残るのかを先に決め、残高試算表と通帳の見え方を揃えます。この章では、期末をまたぐときにズレが出やすい3パターンだけを型で整理します。

パターン1:買取入金が分割、期末に「未収入金」が残る

期末前に資金化したものの、入金が一括ではなく「先に一部、残りは翌月」という契約があります。この場合、翌期に受け取る分を未収入金として残しておくと、売掛金を消した理由と入金の遅れが同じ線で説明できます。逆に、未収入金を立てずに処理すると、「通帳に入っていないのに売掛金だけ消えている」状態になり、決算で引っかかりやすいです。

状況 期末に残るもの 確認する書類
買取入金が分割(残金が翌期) 未収入金 精算書・入金予定の通知、通帳
入金は済んだが、別請求の手数料が翌期払い 未払金 請求書・支払予定表、通帳

パターン2:二社間で売掛先入金が期末に入り、送金が翌期になる

二社間は、売掛先からの入金がいったん自社口座に入り、そこからファクタリング会社へ送金する流れになりやすいです。ここで期末をまたぐと、通帳には「入金だけ」が残ります。売掛金はすでに買取の時点で処理しているため、期末に残すべきなのは売掛金ではなく、送金待ちの預り金(仮受金)です。これが残っていれば、翌期に送金したときに同額で消えます。

タイミング 借方 貸方 期末の見え方
期末までに売掛先入金
  • 普通預金 1,000,000
  • 預り金(または仮受金)1,000,000
通帳は増える。試算表は預り金が残る
翌期に送金
  • 預り金(または仮受金)1,000,000
  • 普通預金 1,000,000
翌期に入金と出金がつながる

この形にしておくと、「期末の預金残が増えているのに、売掛金が減っていない」といった誤解が起きにくくなります。通帳の増減と、試算表の残高がそれぞれ何を意味しているかが、一本の説明になります。

パターン3:実質リコースで「借入金」が期末に残る

実質リコースとして借入に近い処理をしている場合、期末に残るのは売掛金ではなく借入金です。売掛先からの入金が期末までにないなら、売掛金はそのまま残りますし、資金の受け取りで立てた借入金も残ります。ここを「売掛金は消したのに借入金も残っている」状態にしてしまうと説明が苦しくなるので、契約条項と仕訳の前提が一致しているかを、期末の時点で必ず確認します。

チェック項目 見る場所 ズレが出たときの典型
買戻し(償還請求)・補填条項の有無 契約書 ノンリコースのつもりで売掛金を消し、期末に差し戻し
売掛先入金の有無と日付 通帳・入金明細 入金が翌期で、期末の残高説明が曖昧になる
別請求の手数料・未払金の残 請求書・支払予定 手数料を差額に混ぜ、税区分の見直しが翌期にずれる

仕訳の正解は一つではありませんが、決算で求められるのは「残高が何を意味しているか」を説明できることです。契約書(条項)・通帳(入出金)・請求書(内訳)をそろえ、売掛金・未収入金・預り金・未払金・借入金のどれが残るのかを先に決めておけば、期末の整理は一気にラクになります。

債権譲渡との違い:仕訳に影響する範囲だけ

債権譲渡とファクタリングの契約・通知・登記の違いを確認する経理担当者

「ファクタリングって、結局は債権譲渡ですよね?」と聞かれることがあります。概念としては近いのですが、実務で大事なのは言葉の違いより、あなたの会社の通帳と試算表に何が残るかです。この章では、通知(非通知)・登記・契約条項の3点が、どこで仕訳に跳ね返るのかだけを整理します。法律の細部ではなく、経理の判断がブレない線引きに絞ります。

違いは3つだけ。通知(非通知)・登記・条項が「お金の通り道」を変える

ファクタリングは、実務では「資金調達サービス」として語られやすい一方、債権譲渡は取引スキームとしての言葉です。経理として見るなら、両者の決定的な違いは次の3つに集約できます。
1つ目は、売掛先(取引先)に通知するか(非通知か)。2つ目は、債権譲渡登記を使うか。3つ目は、買戻し(償還請求)・補填・差替えの条項があるか(実質リコースか)です。
この3点が揃うと、入金がどの口座に入るのか、誰が回収を担うのか、未回収時の負担がどこに残るのかが決まり、結果として「売掛金を消す/残す」「預り金を立てる/借入金にする」といった処理が分岐します。

論点 債権譲渡で起きがちな形 ファクタリングで起きがちな形 仕訳への影響
通知(非通知) 通知ありで売掛先が支払先を変更しやすい 二社間は非通知が多く、売掛先→自社→業者の流れになりやすい 自社口座に売掛先入金が入るなら、預り金(仮受金)で受ける検討が必要
登記 登記を使うスキームもある(対抗要件を意識) 契約条件として登記を求められることがある 登記関連費用が出る場合、差額控除と別請求を分けて科目・税区分を管理
条項(買戻し等) 譲渡でも契約次第で実質リコースになり得る ノンリコースをうたっていても条項で実質リコースになることがある 売掛金を消すか残すか、借入金処理に寄せるかを左右する(第4章の分岐)

経理の線引き:債権を「移した」のか、「回収代行+前払い」なのか

仕訳の迷いどころは、「債権譲渡=売掛金を消す」で固定してしまうことです。現場では、契約の実態が次の2つのどちらに近いかで整理すると、ブレが減ります。
一つは、債権そのものが移り、未回収の負担も基本的に移る(ノンリコースに近い)形です。この場合は、売掛金を消して、差額を手数料として残す考え方が馴染みます。
もう一つは、未回収の負担が自社に残り、売掛先からの入金もいったん自社口座を通る(実質リコース・非通知二社間に多い)形です。この場合は、売掛金は残し、資金の受け取りは借入に近い流れで整えたほうが説明しやすい傾向があります。

どちらに寄せるべきか迷ったら、前章までの3点チェックに戻ります。
・買戻し(償還請求)や補填の条項があるか
・入金が誰の口座に、どの名義で入るか
・請求書の手数料が何種類あり、差額控除か別請求か

ここが揃っていれば、「債権譲渡の話をどこまで書くか」より先に、あなたの会社の仕訳が決まります。

次章は、現場で詰まりやすい質問だけを拾って短くまとめます。とくに「勘定科目をどれに統一すべきか」「未収入金と預り金の使い分け」「消費税区分で迷ったときの確認先」をFAQ形式で整理します。

よくある質問

ファクタリングの仕訳や勘定科目について税理士に相談する経営者と経理担当者

ファクタリングの仕訳は、理屈よりも「現場のズレ」をどう止めるかで決まります。ここでは、経理担当や経営者から実際に出やすい質問だけを拾い、判断の順番が戻れる答えに絞ってまとめます。

勘定科目は何を使えばいい?支払手数料と売上債権売却損、どっち?

どちらか一つが絶対、という話ではありません。大事なのは、社内で統一して、翌月や翌期も同じルールで処理できることです。
目安として、ノンリコースで「売掛金を売却して差額が出る」形を強く意識するなら売上債権売却損に寄せやすく、別請求の費用も含めて広く「手数料」で管理したいなら支払手数料に寄せやすいです。
ただし、請求書の内訳が複数ある場合は、差額控除と別請求を一行に混ぜないで残すほうが、決算と税務で説明がラクになります(第5章の考え方です)。

未収入金・預り金(仮受金)を使い分けるコツは?

ざっくり言うと、未収入金は「あとで自社が受け取るお金」、預り金(仮受金)は「いったん自社口座に入るが、通過していくお金」です。
・買取入金が分割で、残金が翌月に入る → 未収入金
・二社間で売掛先から自社口座に入金があり、その後にファクタリング会社へ送金する → 預り金(仮受金)
迷ったら通帳を見ます。期末に通帳の残高は増えているのに、そのお金が自社のものとして確定していないなら、預り金で残すほうが噛み合いやすいです。

実質リコースかどうか、どこを見れば判断できる?

名称ではなく契約条項です。買戻し(償還請求)、不足分の補填、債権の差替えなど、「払えないときにこちらが埋める」方向の文言があれば実質リコースの可能性があります。
その場合、売掛金を消して終わりにすると、未回収が起きたタイミングで帳簿がねじれやすいです。売掛金は残し、資金の受け取りは借入に近い流れで整える(第4章の型)ほうが、決算で説明が通りやすい傾向があります。

手数料が複数行ある。消費税区分はどう考えればいい?

ここは「一行にまとめない」が結論です。差額控除の買取手数料と、別請求の事務手数料・審査料・振込手数料は、同じ“手数料”でも性格が違います。
消費税区分は、契約実態と請求内容で判断が分かれ得ます。請求書に税額が明記されている費用は、その表示と内訳を残したうえで処理し、迷うものは契約書とセットで税理士等に確認してください。あとから見返せる材料が残っていることが、いちばんの安全策です。

決算でチェックされやすいのは、どこ?

よく見られるのは「残高の説明がつくか」です。売掛金を消したなら、なぜ消せたのか(ノンリコースの前提)が言えるか。預り金や未収入金が残っているなら、それが何の残かを通帳と明細で示せるか。
逆に言うと、仕訳の“科目名”より、契約書(条項)・通帳(入出金)・請求書(内訳)が揃っているかで勝負が決まります。ここが揃っていれば、修正が必要になっても最小限で済みます。

迷った場面 まず見るもの 戻る章
売掛金を消す/残す 買戻し(償還請求)・補填・差替えの条項 第2章・第4章
入金の処理が噛み合わない 入金名義と口座、二社間/三社間のフロー 第3章・第6章
手数料がぐちゃぐちゃになる 請求書の行数(差額控除か別請求か) 第5章

次章では、ここまでの判断を一枚に畳み、仕訳がブレないチェックリストとしてまとめます。

まとめ

ファクタリングの仕訳と勘定科目を整理して決算に備える経営者と経理担当者

ファクタリングの会計処理は、用語を暗記するより「契約実態とお金の通り道」を先に固定するほうが、結果的にラクです。売掛金を消すのか残すのか、未収入金を立てるのか、預り金で受けるのか。迷うところはだいたい同じなので、最後に“戻れる手順”として畳みます。

仕訳がブレない最短ルート:3点チェック→型→期末の残高

まず契約書で買戻し(償還請求)や補填があるかを確認します。次に通帳で、入金がどの口座にどの名義で入るのかを見ます。最後に請求書で、手数料が差額控除なのか別請求なのか、何行に分かれているかを押さえます。この3点が揃えば、ノンリコースなら「売掛金を消す型」、実質リコースなら「売掛金を残して借入に近い型」へ自然に分岐します。

最初に見るもの 決まること よく使う勘定科目(例)
契約書:買戻し(償還請求)・補填・差替え 売掛金を消す/残す(ノンリコース/実質リコース) 売掛金/借入金/売上債権売却損(または支払手数料)
通帳:入金口座・入金名義(自社か、直接か) 預り金(仮受金)を使うか、不要か 普通預金/預り金(仮受金)/未収入金
請求書:手数料の行数(差額控除/別請求) 手数料を分けて残すか、混ぜて崩すか 支払手数料/未払金/(必要に応じて)仮払消費税

決算でいちばん大切なのは、期末残高の説明が通ることです。売掛金を消したなら「なぜ消せたのか」を契約条項で示せること。未収入金や預り金、未払金が残るなら「何の残か」を通帳と請求書で追えること。ここまで揃えておけば、科目名が多少違っても、修正は小さく収まります。
仕訳に迷ったら、また契約書・通帳・請求書の3点に戻ってください。帳簿を崩さずに済む確率が、上がります。